湧稲国をご存知ですか?
後輩オーディションに合格した後輩1期生です。
第1回後輩オーディションといえば引きこもりミュージシャン・ノリアキの印象が強い人もいるでしょうが、
実は僕たちを驚愕せしめたのは湧稲国という男でした。
彼は、なんとこのオーディションに参加するために
● 沖縄から来た
というツワモノ(というより完全にイタイ人)であり、正直僕は
「たぶん、言葉は通じないだろうな」
と思っておりましたし、できるだけ早く帰そうと決めていました。
しかし、実際の面接風景はあまりに面白くて、この面接は相当気合を入れてウケる日記にアップしなければならないと誓ったまま、アップできず今日を迎えています。
ただ、それは僕がものぐさというよりも、彼という素材が僕たちの手を超えた怪物(そう。彼は怪物なのです)なので、湧稲国生誕の瞬間である面接風景をアップする、ということはすなわち、彼をこの数百ピクセルという枠の中に閉じ込める行為に他ならず、それをしてしまって本当に良いのだろうか、と今、現時点でも、古屋との話し合いで唯一決定したプロデュース方針が
「おそる、おそる」
であり、多分、松坂大輔を育てた横浜高校の監督と同じような心境でありましょう。
その怪物・湧稲国のプロデュースに関して、今、考えられているのが
「彼は詩人としての才能があるのではないか?」
ということであり、彼には週に2本の詩を書いてもらっています。
ただ、本来彼は何をやらしても輝くエメラルドの原石に違いなく
彼と言う天然素材を生かすには、「詩」というジャンルが適しているのではないかという、暫定的な考えであって
ただ、これ1つを決めるだけでも、古屋と僕は、何十時間、何百時間とデニーズで話し合い、時には、互いの胸倉をつかみ合ったり、机の上のコーラの入ったグラスを叩き割ったりしながら喧々諤々の討論を重ねた結果のことなのです。
もし、湧稲国がいなかったら―――今でも時々思います。
もし、湧稲国が去年の後輩オーディションを受けにきていなかったら、古屋と僕は、もっと多くの時間をモノ作りに充てることができ、今頃はメジャーのクリエーターとして世の中に認知されていたのではないか。
しかし、きっとこれも運命だったのでしょう、神は怪物を僕たちの前に遣わせられたのです。
そして、何より、
湧稲国という魔物に魅入られたのは、古屋でありました。
古屋は湧稲国と出会ってから延々と、他のお金になりそうな仕事、自分の名前を世に出す仕事をほぼ全て放棄して、
ひゃは!ひゃははは!と口を半開きにして涎を垂れ流しながら
詩人・湧稲国朝輝を撮り続け、まるで中毒症状のように、彼の映像をYOUTUBEにアップし続けているのです。
一度、古屋に直訴したことがありました。
「たのむから、これ以上湧稲国をYOUTUBEにアップするのはやめてくれ。そして…仕事をしてくれ」
しかし、古屋は視点の定まらない目で呆然と宙を見つめたまま言いました。
「湧稲国を撮らない理由がみつからないんだ…」
僕はもう何も言うことができませんでした。
さて。
そんな怪物・湧稲国ですが、実は1ヶ月ほど前から、古屋と僕は密かにある計画を進めてきました。
湧稲国という逸材を伸ばすのに必要なのは、僕たちが腫れものに触るようにプロデュースしていたのでは湧稲国を成長させることはできないのではないか。今湧稲国に必要なのは大きな試練であり、その試練を乗り越えたときこそ湧稲国という原石が本当に光輝くのではないか、そう考えるようになったのです。
そして、僕たちが毎週行っているネットラジオに出演するために、いつものようにデニーズにやってきた湧稲国にこう告げました。
「ソフトバンクのCM決まったから」
つまり、こういうことです。
古屋が撮影した湧稲国の詩の朗読をYOUTUBEにUPしてまいりましたが、それが今をときめくあの、ソフトバンク社の目にとまり「ぜひ湧稲国の朗読でCMをやって欲しい」というオファーが来たということを伝えたのです。
僕たちは湧稲国に言いました。
「ソフトバンクの携帯電話を称えるような詩を作って欲しいんだ。それを先方に見せるから。場合によっては地上波で、キャメロンディアスやブラピとのCM共演もあり得るから心の準備しといて。」
すると…
次の湧稲国の放った言葉に、湧稲国の怪物たるゆえんを再発見することになるのですが、
湧稲国は、「ソフトバンクのCM決まったから」の台詞に対してこう答えたのです。

「わかりました。」
このときの驚きを、文字だけでは表現できないかもしれません。
僕たちははっきりとした滑舌で「キャメロンディアスやブラピとの共演もあり得る」と言ったのですが、
湧稲国は、なんら考えることなく、さらりと、(もうそれは本当に文字通り、さらり、といった感じでしたが)
「わかりました」
とただ一言だけデニーズの空間に放ち、
そして数日後、なんら疑問を抱くことなく、
「できました」
ソフトバンクの詩を作成してきたのでした。
ソフトバンク
僕たちはとんでもない怪物を世に解き放ってしまったのかもしれません―――。
2006年12月19日 20:54